2017.03.26

【草間彌生展デートのすすめ】楽しみ方も見方も決まっていないのが、美術館なんだ

舘そらみ

「カッコつけて何時間も美術館に居る女っているじゃん?」そんな言葉がテレビから聞こえてきた、深夜のバラエティ。
“いけ好かない女”について、芸人が語っていた。
「絶対もう見終わってるのに、一枚の絵の前にずっと立って、いやいやいや何を見てるんだよ!っていうさ、」と芸人は続けていた。

ふーむ、美術館好きと美術館嫌いの溝は深い。
この溝は一体何なんだろうと、「美術館とかつまらないから無理」を公言する男性と、美術館デートをしてみた。
最近、頻繁に広告を見る、「草間彌生展」だ。
日本人アーティストだし、現在活動している方だし、敷居が低いだろう!の思いからだ。


「ホント苦痛だから、1時間以内で終わらせてね」の男と、
「逆に、どうやって楽しめずに居られるのかが分からない」な美術館大好きな私の2人組。平日の昼下がり、乃木坂駅へと降り立った。

「ほら、行列出来てるじゃん、無理無理帰ろう!」と、チケット売り場の行列を見て言い出す男(仮名:サトシ)。
「こんくらいの列だと中はそんなに混んでないから、入るよ!」と引っぱり込む。

 

楽に楽しむ方法① 人混み回避術

美術館は広いです。入り口で少々行列が出来ていても、中は意外と混んでないということも。行列にのみ踊らされてはいけません。また、遅い時間になるほどに空いていることが多いです。また、前売り券を購入しておくととっても便利。
反対に、何時間もの入場行列が出来ているような時は、絵画よりも人混みを観察するハメになるので辞めるのが賢明。人の流れを読めば、意外と人混みは回避できるもの。

 

楽に楽しむ方法② すぐさま身軽に!

入場したら、すぐさまロッカーに荷物と上着を入れましょう。身軽にいること、これ非常に大事な秘訣です。「大した荷物じゃないから大丈夫」というサトシの荷物も無理やり入れる。
作品を見る間は立ちっぱなしだし暗かったりと、意外と体力を使うもの。とにかく、楽にしてストレスを無くしましょう。そのためにも、ロッカーは入り口近くに大量に設置されているし、なによりお金はあとで返却されます!!!

さあさ、身軽にして、出発です。因みに、最近では「撮影可能エリア」を設けている展示も多いので、スマホは持っておくといいかもです。


草間彌生展では、入り口前でシールが配られて、オブジェに自由に貼れるという参加型の展示もありました。こういう参加型の作品も最近増えているので、ぜひ面倒くさがらずに参加をオススメします。

草間彌生の世界に少しだけ参加する嬉しさを感じつつ、さてさて入場です。


入ってすぐの大きな絵画に心奪われ、私はしばらくそれを見つめていた。傍らで困った感じのサトシが居たので、「あ、いいよ付き合わなくて。それぞれのペースで見ようよ」と伝える。
「え?デートだよね?」
「え?デートだと一緒に見なきゃいけないの?」逆に戸惑う私。え、そういうもんなの?
「え?」
「え?」

 

楽に楽しむ方法③ 好きにバラバラで見よう!

デートにしても、友人と一緒にしても、中に入ったらバラバラに見るのがポイント。だって、それぞれに合わせていたら、ただの窮屈な時間になっちゃうじゃない。思うままに、見るのがいい。「それじゃ一緒に来た意味は!」と思われてしまうかもだけど、よっぽど好きな作品に出会った時に「見て見てこれすごい好き!」って呼んでくればいい。
ちょっと離れた距離でなんとなく意識しながら過ごすのも実は結構楽しいんだから。遠目に見ながら「ああいうの好きなんだー」とか、「わあ、心惹かれてるなあ」なんて気づくのも楽しい。
一緒に見ても勿論いいけど、必ずしも一緒に居なくてもいいって思うときっと美術館は途端に楽しくなる。

ということで、「それぞれのペースで好きに見ようよ」と伝え、私はちょっと入り口へと向かう。
「え、なぜ戻る?」と引き戻されるが、私は、ちょっと戻って入り口の題字が見たくなったのだもの。

 

楽に楽しむ方法④ 見方にルール無し!

そう、見方にルールなど無い。ちょっと前のに戻りたくなったら戻ったっていい(混雑時は人の流れは尊重しつつ)。はたまた全ての作品を見なくてもいいし、全てを同等に見なくてもいい。近くから見る必要も無ければ、説明書きを読む必要もない!見方に、ルールなし!!!

 

そうして、「草間彌生 わが永遠の魂」を自分のペースで見始めた。

草間彌生は、1929年生まれの御年87歳の類まれなアーティスト。世界で最も評価されている日本人アーティストの一人だろう。
長野県に生まれ、幼少期から幻覚や幻聴に悩まされて絵を描き始めたという彼女の、人生を通した作品の数々が並んでいる。絵画のみならず、彫刻や、さまざまなパフォーマンスの映像など、次から次へとやってくる。
ものすごい作品数の、大規模な展覧会だ。


圧巻なのは、「わが永遠の魂」という作品群が展示されたひときわ大きな部屋。総数500点にも及ぶ連作の中から、今回は日本初公開となる約130点が一堂に会している。


広い空間に、鮮やかでパワフルな作品たちが並ぶ。


息を飲み、私は泣きそうになっていた。ものすごく直球の愛と怒りをぶつけられた気がして、その衝撃に心が震えていた。
そんな感動を覚えながら、特に気になった一つの作品の前に立っていた。
他のところを見ていたサトシがフラフラと隣にやってきた。「これ好きなの?」


「なんか好きかも」と、絵画を見ながら答えた気がする。
「どの辺が?」
え、どの辺?難しい質問が来た。え、どの辺だろう…?
「何を持ってこころのありかなのかね?」
私が見ていた作品は“心のありか”というタイトルなのだと初めて知る。
「真ん中の部分が心臓ってこと?回りの水色部分が社会って意味?」
んー、そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
というかそんな風に考えて見てなかったから、よく分からない。
「てか好きなの見てきなよ。私に合わせなくていいからさ」と何度目かに伝えた。
「もう全部見た」
え、もう全部見たの?入って15分と経ってなかった。
やっぱり退屈?と聞いてみた。
「退屈っていうか、見方がよく分からない」
「……見方かあ。」
出た、“見方”。
“見方が分からない”という言葉は、よく聞く。そのたびになんだか違和感を感じていた。
だって、見方ってなんだろう。
じゃあ美術館が大好きな私は、見方とやらを果たして習得しているのだろうか。

 

見方ってなんだろう。


確かに、絵画を楽しむにはおそらくちょっとしたコツがある。
そのコツとはきっと、、、、、「意味を求めないこと」そして「考え過ぎないこと」。
前情報は要らないし、もっと言うと貼ってある作品解説だって絵画を見る前には読まない方が良いと思う。
ただ、感覚でだけ見る。実は、目もあまり使ってない。
まるで寝起きの時のように、ボーンヤリと見る。
絵画そのものというよりも、そのあたりにボヤーっとあるオーラのようなものをポケーと見る。見るというか、とらえる。
それで何も思わなかったら次の絵画にいけばいい。
でもたまに、バチィィィッッッ!!と焦点が合う時がある。絵画側からキャッチしてくれる時が来る。それは、快感だ。
なんだかアホみたいな表現になってしまうが、「考えるな、感じろ!」だし、かといって、「頑張って感じるな!ただ、絵画の前でボヤーっと立ってれてばいい!」
なのだ。
そうやって見るクセがついたら、ウソみたいに絵画は楽しくなる。
確かに、これは「見方」かもしれない。要は、「見方を取り払うっていう見方」だ。

だから私は「心のありか」なんて絵画を見ながら、そのタイトルが心のありかであることは気付いていなかったし、どこが心で、回りのギザギザがどういう意味なのかは大して考えていなかった。ただ、絵画から感じるエネルギーのようなものに、対峙していた。

なんてことを、サトシに説明した。“なんか気持ち悪いこと言っている…”と顔に書いてあったが、本当だからしょうがない。
「何を見ているかと言われれば、何も見てないんだよきっと。意味とか求めないで、理解しようともしないで、ただ心で対話しているというか…うーむ…」

何と言っていいか分からないので、「とりあえずただボーッて見てみてよ!テキトーに音楽でも聞いてるような感じで!」と、お願いした。
「……分かった、ちょっともうちょっと見てみるわ」サトシは、次の部屋へ歩いて行った。

私もまた、じっと止まったり時には素通りしながら見て回った。(時には部屋ごと飛ばすことさえある)、
一人の人間からこんなにも力はあふれ出るのか、と圧倒されながら一周した。
若いときから現在まで、草間彌生の作品はどんどん性質を変えている。どの時代の作品も、ため息が出るほどにパワフルだ。
ちょうど最後の部屋でサトシに会ったので、2人で一緒にもう一周した。

 

楽に楽しむ方法⑤ 一周終えたあとのもう一周

一通り見終えた後に、スーッと全部屋をもう一周するのがオススメ。2周目なので、ただ通り過ぎるだけでいい。そうすると、なんだか作者の人生や社会や、色んなものが整理されて心に蓄積されたりする。とってもいい気分で展示場所をあとに出来るから、オススメ。

ロッカーで荷物とコートを取り出して(戻って来るお金を忘れずに!)、美術館を後にした。
出る瞬間に、ちょっと建物振り返って「よし!」って外に出るのもオススメ。日常が、きっと楽しくなるから。


美術館終わりで、のんびりとコーヒーなんて飲む。どうだった?と聞いてみた。
「心で見るとかは分かんないけど、ちょっと気になるのはあった」
と、カタログのページを繰った。

「テキトーに見てたら、これだけなんか気になったんだよね。吸い寄せられた感はちょっとだけあった」
“テキトーに見る”そう、きっとそれでいい。だって、誤解を恐れず言うが、例えば草間彌生展なんて、幼少期から幻覚や幻聴が見えてるなんていうわけが分からない天才(尊敬の意味を込めて)の、作品群だ。
理解しようったって理解できない。頭では理解なんて出来ない作品ばかり。
まずだって、頭でどうこうで作られているものじゃない。


理解したり説明しようったって分からないでしょう。


テキトーに見る。そうしたらきっと、何かが見えてくる。
ルールも、見方も、楽しみ方もない!前情報も、知識も要らない!
美術館とはきっとそんな場所なのです。
一枚一枚から何かを得ようとしたら「なんも分かんねー!」ってなっちゃう。
きっと、50枚つまらなくても1枚だけなんだか心に残る、それくらいの比率がきっと美術館。

確かに、高尚な感じを醸し出している美術館も中にある。
だから、初めての人にも草間彌生展をオススメしたい。
とってもパワフルで、イキイキとしていて。そして、「あんまり知らないけど来てみた…」という入場者で溢れています。
分からなくてもいい!!!それを、全面的に肯定してくれる、展覧会です。
常識なんて、かなぐり捨てて、類まれな天才の作品を、ぜひ体中で感じてみてください。

追伸:それにしても、なぜサトシはこんなにも「美術とは理解するもの」と思ってしまっているのかと話してみたら、きっと「授業のせいだね」となりました。美術や歴史の授業で、作者やタイトルや背景を暗記させられたから、そういう刷り込みがあるのだろうと。授業で習ったアートなんて、くそくらえだ!考えるな、感じろ!理解などせずとも、アートはそこにある!草間彌生展は、国立新美術館で5月22日まで。
(正解の見方なんて無くて、私が説明した見方もただ私に合っているだけ。ぜひ、あなたなりの見方に、出会えることを祈ります)

人気タグをチェック!

LINE@はじめました

[PR]ホテルと新幹線のお得なセット

1泊2名様1室おとなおひとり様の場合

コンラッド東京

都内最大級のスパ&フィットネスを完備。モダンフレンチ、中国料理、日本料理など一流シェフによるレストランも充実しています。
  • Twitter
  • Facebook
TOKYO DAY OUT
  • 泊まれる本屋の最新版

    “泊まれる本屋”がコンセプトの「BOOK AND BED TOKYO」が、カフェ移設で新宿にオープン。

    詳しく見る

  • 表参道で深夜メシ!

    蕎麦 VS お好み焼き どっちにする?

    詳しく見る

  • 表参道は巨大な池だった!?

    知られざる表参道の歴史をひも解く連載スタート。

    詳しく見る

  • 触れて感じる、アート展

    「ふれる」をテーマに最先端デザインの驚きとおもしろみに出会う!「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2017」。

    詳しく見る

  • #1
  • #2
  • #3
  • #4

ハイクラスホテル

人気スポットランキング

NEWS

もっと見る

RANKING

PICK UP

もっと見る

シンボルタワー